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ダイヤモンドジュビリー

  • 2012-06-08 (Fri) 00:49
  • 総合

 先週末からこのところ、英国はエリザベス女王の即位60年のダイヤモンドジュビリーを祝う「凄まじい嵐」が通り過ぎたかのような日々だった。
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 ジュビリーの連休期間、オックスフォードにいたので、ロンドンの祝賀ムードには遭遇していなかった。英国の歴史の「節目」の一端ぐらいはこの目に収めておこうと、連休最終日の5日朝、女王が拝礼に訪れるセントポール寺院に足を運んだ。寺院の周囲はもちろんのこと、寺院に続く通りは多くの人たちが女王の到来を待ち構えていた。寺院の前では、王室制度に反対し、リパブリック(共和国)を訴える人たちが “9500 Nurses or One Queen?”(女王一人の維持費で9500人の看護婦を増やせるのに)などという抗議のプラカードを掲げて気勢を上げていた。しかし、すっかり多勢に無勢の印象・・・。
 メディアもお祝いムード一色だった。高級紙ガーディアンや日曜紙オブザーバーなどは論説で「王政から共和制へ移行が理想」といった社論を展開していたが、一面や社会面ではさすがに国民の祝賀模様を丁寧に報じていた。
 私が若干違和感を覚えたのは、普段は冷静な客観的報道で知られるあのBBC(英国放送協会)が朝夕のテレビやラジオで、かなり興奮したレポートを繰り返していたことだ。リポーターがジュビリーを祝う人々の熱気に影響されてか「はしゃいで」いる印象さえ受けた。日本でNHKがあのようなレポートをするのは想像しにくい。
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 英国の中でもそうした大はしゃぎを苦々しく思っていた人は少なくないようだ。特に、英国からの独立の機運があるスコットランドは結構冷めていたと伝えられている。5日のガーディアン紙にはそうした読者の意見が掲載されていた。「ジュビリー報道ではBBCは王室のチェアリーダーとなる政治的に危険な決定をした。失望感を禁じ得なかった」「キャメロン首相は英国民が女王と同じ思いでこの60年を乗り切ってきたということをテレビで語っていたが、大間違い。私は王室廃止論者ではないが、貧しい暮らしをしている国民の多くが女王と同じ思いをしていると考えるのは浮世離れした認識だ」「冷ややかな受け止めはスコットランドだけではない。私が住むウェールズでも似たようなものだ」
 英国民の大多数がエリザベス女王を敬愛していることに異論をはさむものではない。だが、私は今回のジュビリーの喧騒を見ていて、1990年代のロンドン支局勤務時代によくメディアで目にした言葉 “feel good factor” を思い出していた。私の電子辞書には「(経済の)好感材料」と紹介されている。
 経済苦境に悩む欧州。英国も例外ではない。何とか、皆で「フィールグッドファクター」を享受しようとしているかのようでもあった。「何しろ、我々英国には独仏や、あの米国も縁のない王室がある。その上、我々に60年も尽くしてくれている女王がいるのだ。それを世界に見せてやろうではないか・・・」という感じが透けて見えるような気がする時もあった。あと50日ほどで、もう一つの「フィールグッドファクター」となりそうな五輪がやって来る。(おまけのつづきがあります)
 (写真は上から、セントポール寺院の前の人だかり。抗議のプラカードも。至近距離でシャッターを適当に押していたら、車中の女王の笑顔を運よく撮影。デジカメは凄い!) 

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 オックスフォードからロンドン方面への帰途の列車で、日本では新幹線や特急列車でお馴染みのワゴンサービスが来た。私は英国の列車でワゴンサービスに遭遇したのは初めてで、少々驚いた。「写真を撮らなくては」。目の前を過ぎゆくワゴンを何とかデジカメでとらえて、写真をよく見てみると、右隅に熱いキスを交わしている若い男女が写っている。そうそう、この二人は途中から乗り込んで来て、私の座席からは垂直に横向きの座席に落ち着くと、長々と抱擁していたカップルだ。私が下車するまでほぼ50分、こんな感じでずっとじゃれ合い、キスをしていた。他の乗客は時折、目を向けていた程度。私は二人の抱擁を写真に収めるつもりは毛頭なかった。初めて出くわしたワゴンを撮りたかったに過ぎない。おまけで写真をアップしておきましょう。ゴールデンジュビリーとは全然関係のない話ですが。

Comments:5

Taka Asai 2012-06-08 (Fri) 06:05

省一さん、英女王即位60周年祝賀行事の模様は、こちらでもNHK、民放各社が大きく取り上げていました。ユニオンジャックで埋まったパレート周辺の人、人、人。どこからもらった映像でしょうか、圧倒的な鳥瞰図でした。祝賀一辺倒の報道に埋没してしまったのか、王政反対派の抗議行動は、テレビも新聞も伝えていませんでしたね。ですから、これを記事と写真と捉えた「記者の目」が光ります。2025年までに王政廃止を掲げるRepublicのサイトによると、この日1200人がロンドンの中心街に繰り出しましたが、私服の警護要員に妨害され、プラカードを押収された、とありました。

mutsuo 2012-06-08 (Fri) 13:25

那須君
イギリスじゃな。良いなあ。
俺ん定年後は女房とイギリスを旅行しようやて言よっとじゃが。一緒に行って案内してくれんね。
とりあえず孝ちゃんに聞いて、ごあいさつまでによってみた。またゆっくり読ませてもらいます。

那須 2012-06-08 (Fri) 16:24

Asaiさん バッキンガム宮殿での祝賀コンサートの最後の花火は圧巻でした。テレビで見ただけですが、あれほどの圧巻の花火は初めてでした。「大英帝国」の底力を感じました。

睦ちゃん イギリスはあんたに似合うはずじゃが。まりこさんやったかな。奥様にも。ロンドンだけでなく、田舎の方がのどかでええかもしれんな。これからその田舎も歩くからまた、いろいろ報告する機会があるやろ。

古澤洋一郎 2012-06-09 (Sat) 23:52

 日本のメディアもこのイベントについてはかなり丁寧に報じていて、私などはその映像の美しさと英王室の貫録と国民の王室への敬愛ぶりに大いに感動しました。
 お騒がせチャールス皇太子もすっかり落ち着いてきて、「これなら王様になっても許せる」と思いました。
 言いにくいことですが、日本の皇室とそれを見る国民の目線のレベルを考えると「英国は格が違う」と言わざるを得ないかと・・・。
 

那須 2012-06-10 (Sun) 03:37

古澤さん 私は好きではありませんが、チャールズ皇太子が今回のイベントで株を上げたことは間違いありません。新聞でもかなり皇太子に好意的な報道がありました。あの夜、テレビカメラを前にバッキンガム宮殿で女王を「マミー」とも呼び、ユーモアを交えながら祝意を表した際のスピーチがとても人間味にあふれていたと。ただし、彼が王位を継承する段となったら、また別の話で、英国民の反応は測りかねますが。

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