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アーサー・ミラー (Arthur Miller) ③

  • 2011-10-08 (Sat) 00:50
  • 総合

 物語は題名が示す通りの結末を迎えるが、リンダ夫人が墓地でウィリーに語りかける言葉が印象的だ。”I made the last payment on the house today. Today, dear. And there’ll be nobody home. We’re free and clear. We’re free. We’re free…We’re free…” (私は今日、家のローンの最後の支払いをしてきたわ。そうよ。今日よ、あなた。でも、誰も住む者もいないわ。私たちは完璧に解放されたというのに。私たちは自由なのよ。自由、自由なのよ)
 ウィリーはそしてリンダ夫人は一体、何から「解放」され「自由」になったのであろうか。現代のアメリカの人々は、そして日本に住む我々は「自由」になっているのだろうか。
 再びモシャー教授。「もちろん、ローンの支払い、そうした苦闘からの解放を意味しているのだと思います。ミラーは大恐慌時代に育ったのです。お金は彼にとって大事なものだったのです。金銭に貪欲だったと言っているのではありません。彼の生きた時代はそういう時代だったのです。20セントがものを言う時代だったんです」
 この戯曲が半世紀以上にわたって世界各国で上演されているのはよく理解できる。ブロードウェイでも来年1月に公演される予定であり、モシャー教授は「若い人々の反応が楽しみ」と語っていた。
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 そのニューヨークでは今、若者を中心にウォール街のビッグビジネスや政治に物申すデモンストレーションが日ごとに盛り上がりを見せている。”Occupy Wall Street” (ウォール街を占拠せよ)と呼ばれる活動だが、特定のリーダーがいるわけではなく、現在の経済状況に不満を抱く若者の緩やかな集まりのようだ。今では労組もこの運動の「潜在力」に注目し、「合体」を目指す動きも見られ始めている。
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 私はニューヨークに着いた直後の先月中旬に彼らが公園で集っているシーンに出くわしたが、その時はまだ、数十人程度の小さな集まりだった。昨日(6日)は首都ワシントンにも波及したようだ。ニューヨークタイムズ紙は本日(7日)の紙面で来年の大統領で再選を目指すも、支持率低下に悩むオバマ大統領にとっては、”In Protest, Opportunity and Threat for Obama” (この抗議活動はオバマ大統領にとって諸刃の剣)と報じていた。
 余談だが、この作品で二人の息子が父親を呼ぶ時の呼びかけの表現がいろいろあるのも印象に残った。今なら、通常はDadとか Fatherだろうが、息子たちはPopとかDad と呼びかけていた。だが、ビフがウィリーとの口論の果てに激怒した時は、Willy! とファーストネームだった。日本では父親を罵る言葉はここであえて表現しないが、厳として存在するので、ファーストネームで呼ぶことで「怒り」を表現する必要もない。私の父親は怖い親父だった。ファーストネームで呼ぶなど考えもしないが、悪態でもつこうものなら、げんこつの一つや二つが必ず坊主頭に飛んできていた。今ではそれさえ懐かしい。
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 (写真は上から、先月中旬にウォール街近くで遭遇した若者のデモ。「アメリカでは最富裕の400人が全人口の60%以上の富を独占」と非難していた。ニューヨークタイムズ紙でも連日、若者の動きを大きく報じている)

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