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アーサー・ミラー (Arthur Miller) ①

  • 2011-10-06 (Thu) 05:42
  • 総合

 ニューヨークはこのところ曇り空が続き、朝夕は肌寒ささえ感じるようになっていた。秋を通り越して一気に初冬の冷え込みが到来したようだなと思っていたら、今日水曜日は朝から気持ちよく晴れ渡り、気持ちのいい一日となった。
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 ニューヨークはさすが、ここをゆかりとする作家が多い。アーサー・ミラーもその一人だ。1915年にニューヨークで生まれ、2005年に没している。年譜が示す通り、20世紀を生き尽くした作家である。二人目の妻はあのマリリン・モンロー。
 代表作の一つが1949年に発表した戯曲 ”Death of a Salesman”(邦訳『セールスマンの死』)。
 登場するのは、ニューヨークに住むローマン一家。父親のウィリーは米北東部のニューイングランド地方を車で回り、物品を販売するセールスマン。かつては週に170ドル以上を稼ぎ出す敏腕を誇っていたが、時代が移り、彼が親しかったバイアー(仕入れ係)が第一線から身を引くにつれ、稼ぎが悪くなり、保険の支払いや車、冷蔵庫の修理など日常生活のやりくりにも苦労する日々である。そして、63歳となった「今」、40年近く勤勉に働いてきたにもかかわらず、自分が名付け親となったセールス会社の先代のボスの息子、ハワードから解雇を言い渡される。
 ウィリーには息子が二人。長男のビフは高校時代フットボールのスター選手で、将来どの職業に就いても成功が確実視されるような若者だった。二男の朗らかなハッピーともども、父親にとって自慢の種の子供たちだった。しかし、二人が三十代の青年となった「今」は一家の実情はあまり芳しくない。34歳になったビフはテキサスの牧場で働いてはいるが、将来への展望はない。2歳年下のハッピーも仕事には就いているが、始終女の子の尻を追いかけ回しているような生活だった。
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 ウィリーにはビフの人生が根無し草の放浪の日々を送っているとしか思えず、”Biff Loman is lost. In the greatest country in the world a young man with such—personal attractiveness, gets lost.” (息子は自分が進むべき道を見失っている。世界で最も偉大なるこの国で、あれだけの魅力を秘めている若い男がさ迷っているのだ)と嘆く。瓦解しそうな一家を辛うじて支えているのは母親のリンダ夫人。ウィリーを心から愛しており、父親を頭がおかしいと非難した子供たちを次のように言って諭す。
 “Willy Loman never made a lot of money. His name was never in the paper. He’s not the finest character that ever made lived. But he’s a human being, and a terrible thing is happening to him.” (夫は大金を稼いだことはないわ。新聞に名前が出ることもなかった。これまでに生きてきた人間の中で、最上の人格を有しているわけではないわ。でも、彼は一人の人間よ。その彼にとんでもないことが起きているのよ)
 (写真は上が、青空が広がり、気持ちのいい一日となったニューヨーク。ユニオンスクエア近くで。下が、通りの露店の中には、捨て猫の引き取り手を求めたお店もあった)

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