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思い出した! Dorian Gray だ

  • 2023-06-15 (Thu) 16:35
  • 総合

 ウクライナで続いているロシアが仕掛けた戦争のことは、このところ全然書いていない。書いていないが、ずっと心にかけている。きっと多くの人たちがそうだろうと思う。それがウクライナの人々に対しできるせめてものことだ。私は毎朝、神棚に手を合わせ、ウクライナの地と人々に平和な日々、平穏な暮らしが一日も早く戻ってくることを祈っている。
 しかし、よくよく考えるとこの戦争は異常極まりない戦争だ。通常2か国間の戦争はお互いの領土を攻撃し、打撃を与える戦いだ。今のウクライナ戦争はロシアが一方的にウクライナを砲撃、しかもアパートや病院など民間施設も攻撃対象となり、これをウクライナが迎撃する戦いとなっている。ウクライナがロシア領に砲撃を浴びせることは皆無に近いのではないか。こんな理不尽な戦争はないだろう。挙げ句の果てにはロシアのプーチン大統領は自国の存在が危うくなると核兵器の使用も辞さないと脅している。敗色濃厚となることも含まれるのだろうか。ウクライナから見たら「出口」が見えない戦争に思えてならない。
                  ◇
 最近物忘れがひどくなっているような気がする。数日前から思い出せないのがオスカー・ワイルドの小説の中に出てくる主人公の名前。作品のタイトルも正確には言えないーーなどと前項で書いた。もちろんネットで検索すれば、即座に分かるのだが、「自力」で思い出したいと。
 上記のことを書いたのは日曜日だった。私は昔の友人とか有名人の名前を忘れた時には、その人の顔を思い浮かべながら、あいうえお、かきくけこの順で思いつく名前を念じ、その人の名前を思い出そうとする。この方法で結構名前を思い出す。今回は欧米の人だから慣れないabcの順でその主人公の名前を思い浮かべようと試みた。何も当たりがなくて週末が過ぎた。明けて月曜日。仕事を終えて最寄り駅で下車し、駅中の喫茶店でお茶を飲みながら、何気なく再び主人公の名前を思い出そうとしていたら、ふとドリアン、いや、Dorianという名前が頭に浮かんだ。そうだ、Dorian Gray だ。そしてタイトルは “The Picture of Dorian Gray”(邦訳『ドリアン・グレイの肖像』) だ。
 この本のことを思い出したのは他愛ないこと。ともあれ、ワイルドは好きな作家の一人だ。もちろん彼が残した作品が好きという意味である。2012年に『イギリス文学紀行』を出すために英国とアイルランドを取材の旅で訪れた時、彼の故郷のアイルランドを旅したことを懐かしく思い出す。彼が残した数々の名言も味わい深いものが多い。私は以前に女子大で英語を教えていた頃には、彼の代表作な短篇 “The Happy Prince” を教材にして講義の中で読んだ。我々日本人にも読みやすい分かりやすい作品だった。今取り組んでいる英語短編小説読書会的なオンライン英語教室でもいつか、まだ読んだことのない彼の作品を読む機会があればいいと少し思ってもいる。
 ところで、彼が本来なら作家としての絶頂期に当局から逮捕・投獄されるなどして46歳で不遇の結末を迎えたのは、英国では当時厳しく糾弾された同性愛ゆえ。LGBTQ(同性愛者ら性的マイノリティの人たち)に対する理解が深まりつつある今の時代に生きていたならば、彼の人生(文学)も全く違ったものになっていたことだろう。

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