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徳島にて

  • 2014-03-24 (Mon) 22:32
  • 総合

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 先週末から徳島を経由して関西に来ている。徳島市では一昨年、昨年に引き続き、三回目の講演会だった。徳島トーストマスターズクラブという英語の熟練者のグループと徳島を外国人に紹介するボランティアクラブの招きで、今回は英語から日本語への文学作品の「翻訳」をテーマに話をさせて頂いた。
 さすがに三回目となると、顔見知りとなった方々もいて、一年ぶりの再会を喜ぶ笑顔に遭遇した。ひょんなことから私の徳島講演の集いはスタートした。3月の第一日曜日の南大隅町(鹿児島)・稲尾岳参拝と並び、3月末の徳島への旅は私にとって欠かせない年中行事となった感じだ。
 今回の講演会では要望に応え、冒頭、アフリカ特派員時代に手がけた南アフリカの伝説的指導者、ネルソン・マンデラ氏の釈放直後の単独インタビューのさわりの部分の録音を聞いてもらった。マンデラ氏は当時71歳。ウィニー夫人(当時)の不倫を知らず、新生南アの民主化に向け、希望に満ちた思いが迸るようなインタビューだ。昨年12月に95歳で他界したマンデラ氏の「肉声が聞けて良かった」と思って頂いたようだった。
 本題はパワーポイントに要点を簡略に記して話をした。英語で語るのが主眼だったが、テーマとなった「翻訳」という性質上、ほとんど日本語での話となった。数日前に下訳を終えたばかりのコンスタンス・ワイルド(オスカー・ワイルドの妻)の伝記本や、4年前に翻訳したマーク・トウェインの小説『二人の運命は二度変わる』を中心に話を進めた。
 この種の講演会を済ませていつも思うのは、ああ、もっと上手く話せたのに、という悔いの念だ。それなりに「場数」を踏んだつもりであるが、所詮語りのプロではない。
 とはいえ、講演会終了直後、足を運んで頂いた方々からは優しいねぎらいの言葉をかけて頂いた。場所を移しての懇親会でも、アンケート用紙に走り書きした参加者の感想が読み上げられ、翻訳の苦労、楽しさがよくうかがえたという感謝の言葉を耳にした。面映ゆい思いをしながら、そうした声に耳を傾けた。
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 本題に入る前に、「つかみ」として披露したのが、oxymoron という表現。撞着語法(矛盾語法)という訳語がある言葉で、矛盾する言葉を二つ並べる表現だ。an open secret(公然の秘密)とか a deafening silence(耳をつんざくような静けさ)といったものだ。「私はこれまで幾冊かの本を出していますが、全く無名の物書きです。おそらく、全国で5本の指に入る無名作家だと思います」と語りかけた。これは撞着語法と言うよりは自虐的表現(a self-deprecating expression)か。私は機知に富んだ表現(a witty remark)と考えて口にしたのであるが。そもそも五指に入る無名作家とは何ぞや? そういうものはあり得ないだろうと。いずれにせよ、この自虐的ユーモアは説明を要することなく、予想以上に受けた。徳島の人のユーモアを解する力は相当ありと見た次第だ。
 懇親会の席上、また来年の3月も徳島訪問を約束させられてしまった。私の脳内にある「引き出し」はそう潤沢ではない。はてさて、来年は何について話したものやら!
 (写真は上が、髪の毛が伸びた筆者。一歩間違うと落ち武者。下が、講演会の風景)

Comments:2

Taka Asai 2014-03-25 (Tue) 11:50

省一さん 先日の講演会は定員40人のところえ43人の那須ファンが集まりました。徳島県内の4大学で英米文学を学んでいる学生は200人を超えているので、春休み等でなければ、(来年からは)もっと大きな会場に、という声も出ています。冒頭のマンデラ氏の単独インタビューは、以前、彼のLong Walk to Freedomを読んだことがあるので、貴重な史料の一つとして興味深く拝聴しました。的を得た質問に答える様子は、4時間に及んだというRivonia Trialの最終陳述と重なりました。本題のプレゼンも磨きがかかり、話に引き込まれました。省一さんの「武器」である英語力を駆使して世界を駆け巡った国際ジャーナリストならではの取材秘話も格好の講演テーマになる、と次回以降も楽しみにしています。お疲れまさでした。
 

那須 2014-03-25 (Tue) 21:39

Asai-san, 過分のお言葉ありがとうございます。私にはこれまでのフォーマットで十分でございます。徳島を発つ日に田村さんの言伝で、地元の名産和菓子「小男鹿」を板東、山田さん両名から頂きました。本日京都の兄宅で賞味しました。美味でした。これからもこのブログ欄でお付き合いください。

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