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サリナスへ

  • 2011-06-30 (Thu) 16:05
  • 総合

 ロサンゼルスで早くも1週間が過ぎた。日本と昼夜逆転したような時差にも体がようやく慣れてきた。そろそろ腰を上げる時が来た。目指すはサンフランシスコ。カリフォルニア州の地図を広げ、さてどうやって行くか考える。カリフォルニア州は日本を少し上回る面積があり、同じ州でも、博多から東京ぐらいの距離はありそうだ。いや、もっとあるかな。まあ、急ぐ旅でもないから、電車で行くことにする。
 乗ったのはアムトラック(Amtrak)と呼ばれる全米旅客鉄道公社の電車。あまり期待せず、ロスの鉄道の表玄関ユニオンステーションに向かった。正直に書くと、駅構内でだいぶ戸惑った。自分が乗る電車がどのプラットフォームに着くか直前まで分からなかったからだ。電光掲示板でも案内がない。私のような不安を抱えた乗客は少なからずいたようで、「サンフランシスコ行きの電車はどこに行けばいいのか」と皆同じ質問を駅係員にしていた。
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 何とか無事に電車に乗り込み、指定の座席にたどり着いた。隣は中国人の若いビジネスマン。北米を旅行中とか。本でも読もうかと思っていたら、隣席に戻ってきた彼が、何やら嬉しそうに話しかけてくる。すぐ先に風景がよく見える車両がある、そこでゆっくりくつろげると言っている。え、本当?
 行ってみると、確かに素晴らしい空間の車両だった。通路をはさんで側面が大きなガラス窓になっており、窓に向いた椅子がある。なるほど、これなら車窓を流れる風景を心行くまで楽しめる。しかも無料。日本の長距離列車でこんな贅沢な車両を私は知らない。さらに良かったのは、隣にやって来たアメリカ人の乗客と知り合い、打ち解けた話ができたことだ。座禅(Zen meditation)に詳しい60歳代のこの人は日本人の友人もいて日米の文化についていろいろ話をすることができた。
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 ロスを出てほどなく、砂漠地帯のような乾燥地帯に出た。「南カリフォルニアは昔は砂漠だったんですよ。植生も昔はなかったものが多くあります。あそこに見えるユーカリの木々はオーストラリアから持ってきたんですよ」と説明してくれた。「私はロスで生まれ育ったが、今はロスに住みたいとは思わない。ロスの生活は忙しすぎる。今住んでいるところはのどかなところです。機会があったらぜひ訪ねて来てください」
 車中のアナウンスを聞いていて、サンフランシスコへの途中駅にサリナスがあることを知った。ジョン・スタインベックの生地だ。一旦サンフランシスコに行き、そこからサリナスに向かうつもりだった、急遽計画を変更、サリナスで途中下車することにした。
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 ロスを出たのが午前11時前で、サリナスで下車したのは午後7時ごろだが、時間を感じさせない快適な旅だった。ロス同様、サリナスも午後8時過ぎまで明るい。明日木曜から数日ここでノーベル文学賞も受賞した作家の足跡の一端をたどり、その代表作『怒りの葡萄』について考えることにしよう。
 (写真は上から、車窓の風景を心行くまで楽しめた車両。車窓から見えた乾いた大地。途中から海岸沿いを走り、太平洋の浜辺がすぐ近くに見えた)

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