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ウィリアム・フォークナー(William Faulkner)⑤

  • 2011-11-07 (Mon) 07:22
  • 総合

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 大作家といえども、生前あるいは大きな賞を取るまでは地元の人々に煙たがられたり、揶揄されたりといったケースも少なくないように思える。フォークナーもそういう時期があったようだ。
 作家として独り立ちする前には、大学の郵便局長として働いていたこともあったが、創作が頭にあったのかほめられるような勤務態度でなく、やがて首になっている。しかし、死去25年後の1987年夏には彼の肖像を描いた郵便切手が発行される栄誉にも浴している。地元で催された記念式典には同じミシシッピ州の作家、ユードラ・ウェルティ(1909-2001)もわざわざ出席し、郷土の先輩作家に敬意を込めたスピーチをしている。
 先に紹介した “Light in August” (邦訳『八月の光』)に戻りたい。物語の最後に、レナが無事に生まれた赤ん坊の父親の逃走先を探してミシシッピ州からさらにテネシー州に向け、気のいい男が運転するトラックでヒッチハイクするシーンが描かれる。レナは無論一人ではない。彼女に一目惚れをした気弱な男のバイロンが付き添っている。トラックの運転手は、「なんでこんな一見してうだつの上がらなさそうな男に若々しい少女がくっついているのだろう」と不思議でならない。二人の関係は傍目にはそのように映っている。
 運転手はやがて、この奇妙な二人が夫婦の関係ではなく、男はまして赤ん坊の父親でもないことを知る。運転手は帰宅後、自分の妻に「いや、今度の旅では面白い体験をしたよ」といった感じで笑いながら寝物語をする。彼にはバイロンがレナに惚れきっていることが分かる。バイロンはレナの気持ちが今一つ理解できないようだが、彼には分かっている。レナが自分を捨てた男の後を追ってなどいないこと。バイロンは自分の半分ほどの年齢のレナにすっかり手玉に取られているが、レナもバイロンと所帯を持つことを覚悟していることを。それで彼は妻に言う。
 “Yes, sir. You cant beat a woman. Because do you know what I think? I think she was just travelling. I dont think she had any idea of finding whoever it was she was following. I dont think she had ever aimed to, only she hadn’t told him yet. I reckon this was the first time she had ever been further away from home than she could walk back before sundown in her life….”(そういうことだよ。女には勝てっこない、ということだよ。俺の考えていること分かるかい?俺が思うに、彼女はあの時ただ旅をしていただけなんだよ。誰でもいいが、誰かの後を追っているなんてことは頭の中にはこれっぽっちもなかったと思う。あの男にはそう言ってなかっただけのことさ。彼女のこれまでの人生で、あんなに遠くまで旅をしたのは初めてだったのさ、きっと。それまでは自分の家から日暮れまでに帰れる距離しか旅したことはなかっただろうさ)
 古今東西、女は強し。
 (写真は、フォークナーが妻とともに眠るオックスフォードの墓地。彼が好きだったウイスキーの瓶が並ぶ。私もウイスキーの小瓶を持参し、少し頂戴した後、作家に捧げた)

Comments:2

mutsuo 2011-11-08 (Tue) 08:56

那須君

前回コメントかいもう一ヶ月半もたってしもうた。

きょう11月8日、日本は立冬じゃ。

今週末からは、大相撲の年納めの九州場所が始まっど。

今年は3月11日の1,000年ぶりの大地震、大津波に襲われた日本じゃったが、それ以来、ばったんばったんした日々じゃったような気がする。

なんか気持ちが落ち着かん日が続きよるわ。

那須君のほうは、順調なアメリカさるきの旅のごたるね。

これかい寒ぃなっじゃろかい、気をつけて旅しないよ。

nasu 2011-11-08 (Tue) 20:35

むっちゃん ありがとう。幸い、これからはずっと南部の旅やし、最後はロスだから大丈夫やろ。でも、「体を常に温かく保つのが病気をしないかぎ」と伊東先輩がよく言うとったわ。確かにその通りやな。体を冷やしたらろくなことない。お互い、気をつけましょ。

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