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思い出したこと

  • 2013-07-25 (Thu) 15:47
  • 総合

 狐狸庵先生ついでにもう一つ。本棚に作家の別の単行本が目に入った。はて、こんな本買っていたかいな。『心のふるさと』。
 帯のところに「著者最晩年の珠玉エッセイ集成」と紹介されている。広く名の知れた作家仲間との興味深い付き合いのエピソードが並んでいる。途中から読んだことを思い出したエピソードもあった。何という記憶力(のなさ)。実に情けない。
 それはそれとして、この本の中に「幽霊の思い出」と題された一文があった。これはずっと前にほかのところで読んだこともあり、覚えていた。作家の青春末期の話で、盟友の三浦朱門氏と熱海の旅館に泊まった時に表題の通り、ぞっとする経験に遭遇したことを綴ったものだ。二人は離れの部屋をあてがわれるが、深夜、寝付けない狐狸庵先生の耳元で誰かが「俺は・・・ここで死んだんだ」とささやく。金縛り状態で、ささやきが三度目になった時、恐怖におののく遠藤氏が跳ね起き、助けを求めるように三浦氏に声をかける。すると、隣の布団で熟睡していたと思っていた三浦氏も、さっきから「お前と俺との布団の間にセルの着物を着た若い男が後ろ向きに座っているのを見た」と言う。二人は恐怖のあまり腰を抜かしてしまうが、ほうほうの体で離れから逃げ出す。『心のふるさと』ではその後日談も紹介されていた。
 私が遠藤氏に親近感を持つ理由は他にもあるのだが、このエピソードもその一つと言えようか。私は「霊的」な体験は皆無に近く、一生ないだろうと思っていた。それが四年ほど前、どう考えても「霊的」な経験をした。転居したばかりのマンションで明け方に、うつらうつらしている時、若い男がベッドの頭のところからぬっと現れ、私の額にノミを金槌で打ち込もうとしたのだ。私は「やめろ、何をする、やめろ」と大声を出しながら跳ね起きた。もちろん、寝室には誰もいない。私は夢ではないと思った。今でもそう思っている。白装束で頭に血が付着した若い男だった。
 ここに至るまで、伏線があったからだ。第一にそのマンションに転居して、ほどないころのこと、夜ベッドで寝ていたら、誰かが私の胸の上に載って、人工呼吸をするように私の胸を圧迫していることがあった。息苦しくなった私は「やめてくれ」と跳ね起きた。この時は夢かなと思ったが、誰かが間違いなく、私の胸を押していたという感触が残っていた。危害を加えるというのではなく、単に眠らせないというような感じの行為ではあったが。その数日後のこと、眠ろうと毛布を足元から胸の辺りまで引き上げた時、風が下からではなく、真横に吹き過ぎたこともあった。あれ、おかしいなと思った。いや、気持ち悪いなと思った。
 それでその後は天井の蛍光灯の小さい方の明かりを付けて休むようにした。私は部屋を真っ暗にしないと寝付けない。明かりがあると、寝付くのに苦労する。それで一週間か二週間ぐらい経過して、明け方にトイレに立った時、もう夜が明けていたので、これなら大丈夫だろう、もう一眠りしようと蛍光灯を完全に消して、ベッドに潜り込んだ。眠りに落ちたその瞬間に上記の若い男が「出現」したのだ。彼は「おら、油断したろお」とか何とか言ったような・・・。
 人工呼吸のような胸押しぐらいならまだ許せた。ノミと金槌まで持ち出されたらもう付き合いきれない。さて、どうしたらよかろう。続きはまた後日、気が向いたら、書くことにしよう。この辺りで、丁度A4用紙の末尾のところまで届いたようだ。

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