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「精日」加油!

  • 2019-06-14 (Fri) 11:33
  • 総合

20190614-1560479546.jpg 退職して「自由」の身になったら、好きな本を気ままに読む日々を送ろうと思っていたのはいつの頃だったかしら。海が見え、大きな窓から涼しい風が吹き抜けるどこか、二階家の畳の部屋に寝転んで・・・。何だか夏目漱石の世界にでも浸りそうな雰囲気だ。だが、現実はそうもいかず、当分そのような牧歌的な生活は望めそうにない。向上心が邪魔すると言えば聞こえはいいが、俗世間の「垢」をそう簡単には落せないということでもあるのだろう。
 最近は読書量も激減しているが、新聞の書評欄だけはなるべく目を通すようにしている。気になる本があれば買い求めてもいる。『精日 加速度的に日本化する中国人の群像』(古畑康雄著・講談社)はそうした本の一冊。書評欄で中国文化学者の加藤徹氏が推奨していた。
 著者の古畑氏は共同通信記者で、中国社会の実情に精通しており、ネットの世界にも詳しい人物だ。書名となっている「精日」とは「精神日本人」の略。王毅(ワンイー)中国外相は昨年3月の記者会見の席上、精日は「中国人のクズ」と吐き捨てるように語ったとか。
 「精日」とは著者によれば以下のような中国人のことだという。「もともと日本人ではないが、日本人や日本社会の生活様式、文化、価値観を高く評価し、自らの生活にも取り入れることで、できるだけ(彼らの考える)日本人に近づこうとする外国人(実際には中国人)」
 この書はそうした「精日」の若者の興味深い肉声を伝えている。以下、簡単に略記すると——。<政府が「精日」に汚名を着せる理由は、彼らが日中両国を対比すると、政府の無能さや腐敗が分かってしまうからです><ここ数年の反日宣伝は、やろうとしてもやれなくなっています。おそらくそれは、人々が日本を理解し、好きになり、さらには宣伝部門に反感を持つようになったからでしょう><私の母は二〇一七年に北海道を旅行し、日本のサービスが非常に良かったと感動していました。私も日本を熱愛していますし、日中友好が永遠に続くことを望んでいます。祖先が起こした過ちのせいで、いつまでも私たちが恨みを持ち続けるべきではないのです><中国の伝統文化を探し求めようとする人は、日本に行くのです。唐代の多くの文化は、関西、特に奈良に多く残っているからです><現代の若者は日本に旅行するなど、本当の日本に接しています。我々の仲間内には次のような言葉があります。「日本に行って漢奸(売国奴)にならなかったら、あなたはそれでもまともな人間か」というものです>
 書評子の加藤氏は「中国社会は変化している。日本は中国からますます必要とされており、日本はそのニーズを受けとめ存在感を増すべきだ、という著者の結論は説得力がある」と締め括っている。『精日』の末尾で古畑氏は次のように説く。————中産階級、特に日本に関心が高い人々を、主な交流や発信の対象とすべきです。彼らに働きかけ、日本への考え方が、より客観的、多面的になるようにすべきだと思います。(中略)彼らを通じて日本を伝えていってもらえれば、好転の兆しが見え始めた中国の対日認識も、さらに良い方向へと進むと思います。そのためにも、日本に熱い視線を送っている「精神日本人」のような中国社会の変化に注目すべきだと、最後に改めて訴えたいと思います。————
 日中関係が微妙なバランスにあることは誰もが承知しているが、中国でこのように親日、いや超親日的な人々、特に若者が増えつつあるとは驚きだった。頼もしくも感じた。

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