第四詩集

鳥籠の木

「詩集 鳥籠の木」
船田 崇

四六判並製、144ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-220-4 C0092

装幀 宮島亜紀
装画 ありかわりか
 
 
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著者プロフィール

船田 崇(ふなだ・たかし)
1966 年北九州市生まれ。
詩集『空が最も青くなる時間』(書肆侃侃房・2010 年)
詩集『旅するペンギン』(書肆侃侃房・2012 年)
詩集『青銅の馬』(書肆侃侃房・2014 年)
「侃侃」同人。
日本現代詩人会会員

もくじ

Ⅰ 街
 夜
 嘔吐
 樹海
 坂をのぼる
 試合
 鉛の河
 物体
 うさぎと俺
 坂道
 古い約束
 日誌
 君に会いに行く
 白桃
 烏
 草の日
 旅の心得
 空想する植物
 囁き
 ささやき
 帆船

Ⅱ 村
 ぼんぼん峠
 崖の上で
 配達人
 塀の上
 写真館
 理髪店
 交差点
 時計台
 名前
 助産婦
 鏡
 人違い
 猛獣
 鳥籠の木
 ペンキ屋
 昔話
 飛ぶうさぎ
 機関車
 あとがき

鳥籠の木

森の奥深くに
独りで入っていくと
ごく希にだが
鳥籠の木と出会うことがある

そんなとき木は
きまりが悪そうな顔をする
そして背を向けるのだ
なぜなら
たわわに実らせた鳥籠の
その中身は
どれも空っぽなのだから
だが
空っぽの鳥籠は
村の市場では高値で取引されている
高級食材なのであって
観賞用にも人気だ
気が向けば
その中で一日じゅう過ごすこともできるし
ある条件のもとで午睡すれば
最高に幸せな夢が見られると
もっぱらの噂だ

まれに
鳥が入った鳥籠が
見つかることもある

そんなときは
決して村に持ち帰ってはいけない
かつて持ち帰った者は
翌朝
逃げた鳥を追い
村で一番の高峰や岬や絶壁など
この世の果てという果てに向かって
憑かれたように走っていくのを
土竜に発見された
そして
二度と帰らなかったという

一部始終を
見ていたとうそぶく土竜は
ぼんぼやーと呟いて
土中へ帰ってしまった
あとは
可哀想な鳥籠の木だけが
森の奥深く
鳥を回収しようと
いまも彷徨っている