詩集

水車のめぐる家で


「水車のめぐる家で 改訂版」
川井豊子

装画 高木由美

1995年に手帖舎より刊行された書籍の電子書籍版

2016年1月下旬Amazon・Kindleストアにて発売。

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著者略歴

川井豊子(かわい・とよこ)

岡山県倉敷市在住。ノートルダム清心女子大学文学部国文科卒。
詩誌「aube」「きょうは詩人」「どうるかまら」、季刊誌「ガニメデ」「イリプス」「something」などに参加。
第三回白鳥省吾賞最優秀賞「バイラは十二歳」。
詩集『水車のめぐる家で』一九九五年(手帖舎)。『朔太郎の耳』一九九七年(思潮社)。『眠る理由』二〇〇三年(新風舎)。『スクラップ──に捧ぐ』二〇〇九年(文芸社)。
アンソロジー集『四土詩集』二〇〇二年、二〇〇五年(和光出版)。『スーパーポエム21』二〇〇五年(銅林社)。
書肆侃侃房カフェ散歩シリーズ『岡山カフェ散歩』二〇一五年(書肆侃侃房)。
 
「ニライカナイ──川井豊子の詩の記憶の森」http://www.kiokunomori.com/

水車のめぐる家で
 
 
水車よ 水車
いつも誰よりも早く目覚めていたおまえ
澄んだ水で
ザッパ ザッパと夜風を洗いながら
おまえは彼女たちに
清々しい朝の訪れを告げていた
 
父親が軽く手を振って
田んぼのなかの小さな家を後にする
それから ひとつの日常が始まる
家事の合間に
庭越しに水車を見やるとき
母親はふっと時間を忘れた
光と水を溶き混ぜた
水しぶきのお喋りは
庭中を跳ねまわる子どもたちの耳に
黄金色の実りのように溢れていった
 
そして一日が なんということもなく閉じ
日々のため息やささやかな満ち足りが
静かに身を横たえていた夜にも
めぐっていた 水車よ
漂う外輪船のように眠る家を
あれらの日々
おまえはその銀の羽で
どんな見知らぬ夢の岸辺へと運んでいったことだろう