第四詩集

異本にまた曰く

「異本にまた曰く」
山崎 純治

四六変形、並製、108ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-148-1 C0092

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著者プロフィール

山崎 純治(やまさき・じゅんじ)
第一詩集『夜明けに人は小さくなる』( 一九九七年 ふらんす堂)
第二詩集『完璧な通勤』( 二〇〇七年 ミッドナイト・プレス)
第三詩集『通勤どんぢゃら』( 二〇一一年 思潮社)

もくじ

目が覚めて
鉄の海峡
異本にまた曰く
遊戯
毛蟹を出す
舌足らずの女子高生
モチを食う
唇の記憶
儀式
診察
場末にて
不機嫌な老人
G

6時55分発
清掃人
回収
執行
無伴奏
受給資格者証
みんな一緒ミンチ
休肝日
夜を作る
半減期
伝承

あとがき

                                 

異本にまた曰く

貝のように
足を少し出して
放熱する
生白く湿った夢の
軟らかい本をめくっていた
浅く浮き上がる皮膚を
指でなぞり
ひっそりと
すじを引いて滴り落ちる
文字の断片
露わに開かれる頁の
ぴっちり肉を隠した
指の腹が紙を這い
アスファルトの坂が
緩やかに降りてくる
薄い皮膜に覆われ
なまなましく息づく
幼い頃の町並み
ランドセルを背負った小さな女の子が
たった一人
丸い大きな帽子を振り振り
一心に歩いて
懐かしい人たちはこちらに手を振るが
視線は微妙にずれ
ぼんやり笑っている
軟らかい町は
貝のように
頁がめくられる