第六詩集

靴底の青空

「詩集 靴底の青空」
脇川郁也

A5変形、並製、96ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-130-6 C0092

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著者プロフィール

脇川郁也(わきかわ・ふみや)
1955年生まれ。

詩集
『百年橋』(1988年・紫陽社)
『花の名を問う』(1990年・本多企画)
『バカンスの方法』(1995年・本多企画)
『露切橋』(1999年・本多企画)
『ビーキアホゥ』(2007年・書肆侃侃房)

もくじ

痛みのかたち
三角定規と裁ちばさみ
身体が嗚咽している
肩胛骨の辺りで
激痛に悶える身体
梅雨の晴れ間と歯とカンナ
靴底の青空 
古唐津
ヒマワリ
黄砂
半島に向かう港
言い訳
折り鶴
プサン点景
舌を嚙む
シベリアの夏
イチジク
気配
再生
黒いちび助のためのレクイエム
再会
指さす手袋
届かない声

あとがき

                                 

靴底の青空

朝になって広がった青空が
わだちに映っている
濁り立つ泥色の波紋に
雲が流れていく

笑い声のなか
セーラー服の一群が
五月の風になって通りすぎる
駆けだすまえのおしゃべりが
また さざ波を立てている

哀しみを声高に語る人がいるから
ぼくは貝のように口を噤み
真の悲しみがそっと揺れるのを見つめている
薄皮のような大気を揺らして
地上の喧噪が宙を目指す
闇に浮かぶ青い地球の哀しみを思い起こして
その孤独な姿に身震いする

おまえも独り法師なのだね
水たまりで震える
はぐれ雲のように

日本宇宙フォーラム主任研究員・山中勉さんによれば
ちょうどオーロラが現れる高さあたりに
内と外を分ける地球の皮膚のような
青白い大気の膜が
国際宇宙ステーションから見えるそうだ

飛うめで蕎麦を手繰って
独りで黙って啜り食ったのは
故郷をなくした孤独な人たちの吐息だ
悲しみに満ちたまちの空気だ
だから帰り道
ぼくは片足立ちになって
水たまりにそっと靴を翳す
靴底に空の青さを感じながら
ぼくはまた宇宙のことを思い浮かべる

ぼくの脳漿のなかでは
見あげた先の
銀杏の若葉が風に揺れる間に
四十六億年の時は過ぎ去り
太陽系をひと回りしながら
毛むくじゃらの猿(ましら)が
ぼくと同じように大きな欠伸をする

靴底に
身体の痛みのような青空を貼りつけて
ぼくも五月の風になる

関連書籍

「詩集 ビーキアホゥ」