第六詩集

竈の詩

「詩集 竈の詩」
麻田春太

A5、並製、128ページ 
定価:本体1,500円+税
ISBN978-4-86385-124-5 C0092

WEBでの本の購入はこちらより
Amazon

著者プロフィール

麻田春太(あさだ・はるた)
1943年 福岡県福岡市博多に生まれる
1963年 詩誌「素寒貧」創刊
    「福岡詩人」、「異神」を経て、現在、「九州文学」同人
1970年 詩集「甦る」
1975年 詩集「美しきものへの挑戦」
1982年 詩集「アポリアの歌」で第13回(1982年度)福岡市文学賞(詩)受賞
1986年 ショートストーリー「愛ってなあに」森田昌明共著
1997年 詩集「白の時代」
2007年 詩集「抽斗にピストル」
現在、福岡県詩人会会員

もくじ


竃の詩  
沈みゆく島嶼  
からっぽになったあたま 
遠い季節  
点 火  
饒舌な男たち  
幼形成熟  
花 狂  
追われゆくもの  
外傷構築 
太陽柱


影絵 
奪われた言葉たち  
甦 る  
破文(論破する文)  
竹 林  
渋 柿  
無花果  
石 榴  
冬の棘  
嵌め込まれたモール  
蝋 燭  
杖  
天 泣  
幼生浮遊  
心の赤字  
ごとくのごとく  
歯は嘘吐き  
マスクの女  
劈く音に生かされて  
宙に生きる 
幻住庵  
宙づりにする  
褶曲山脈 
幻 覚―それは69歳の抵抗―  
嘘を摑む  
想いは言の葉にのって  
躓く  

詩の死のあとがき
                                 

竈(へっつい)の詩(うた)

薄暗い台所に立っていた
飯炊きは俺の仕事
涙を流しながら
烟る口火に薪を焼く べる
噴き上がるまで 待て!
甲高い声が走る
息子ばかりの母にとって 俺はへっついだ
目眩む青光りの中で
鮮明に浮かび上がってくる時空よ
俺は
あのじめじめした薄暗いおりの中で
いくつもの 死を受け入れた
へっついは 俺の原点だ
食べるものもなく
母子水だけで過ごす
逞しさを
俺たちは享受した
馬鹿正直な父は狂い
麸のような生終えた
俺の血は青い
滑るような叫びを 点々と滴らせている
その時
ゲリラ豪雨が襲いかかる
みるみるみるみるみるみるみるみるみるまに
床下から
床上へ
糞尿があちこちに
ぷかり ぷかり
ぷかり ぷかり
母を背負って屋根に登り
俺は 空に向かって叫んだ
 ―へっついたい―

  ※へっつい竈(かまど)。鍋・釜などをかけて煮炊きする土煉瓦などでできた設備のこと

関連書籍

「詩集 抽斗にピストル」