第七詩集

詩集 片方の手袋

「詩集 片方の手袋」
各務 章

四六判変形、並製、160ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-027-9  C0092

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著者プロフィール

各務 章(かがみ・あきら)
一九二五年福岡市生まれ。九州大学法科卒業。福岡県詩人会代表幹事。 日本現代詩人会会員。日本文藝家協会会員。(学法)嶋田学園理事。(財)黒田奨学会理事長。「九州文学」同人。雑誌「異神」主宰。

既刊
詩集『池上』現代社 一九五七年
詩集『六月の風に』詩科の会 一九五八年
詩集『水晶の季節』福岡詩人協会 一九六四年
詩集『愛の地平』思潮社 一九七〇年
随想『樹間黙思抄』異神の会 一九七六年
詩集『四季風信帖』異神の会 一九八六年
詩画集『お母さんの宝石箱』生命尊重ビデオ編集委員会刊 一九九二年
詩画集『秋桜物語』二〇〇一年九月
詩集『遠い声 近い声』木星舎 二〇〇二年
詩画集『かぜのあしあと』二〇〇五年
随筆集『風の夢』西日本新聞社 二〇〇六年
随筆集『花影石心』書肆侃侃房 二〇〇八年

もくじ

風の声
ぼくが見たもの
心のかたち
帰り道
夜の深さに
夢の向こう側
竹の道
ひかりの中で

誕生日
母の声
花火
水の色
星のひかり
歩く
草の海
白いまち
日の果て
風のいのち
夕月夜
一枚の絵
凍った時間
透明のスクリーン
丘のひかり
風の一日
校庭にて
村祭り
ふる里の道

秋日
母の笑顔
秋の雲
花のいのち
音のない海


竹の里
初冬
コスモスの道
風の道
少女よ
赤トンボ
明日の言葉を
僕の履歴書
近い道遠い道
母よ
うしろ姿
杉木立
鳥一羽
遠い広場

ぼくが見たもの

あじさいの花のおくに
ぼくは見る
空に落としていった彼の片方の手袋を
むらさきいろの未明
ぼくの背中をとおりぬけて
ぼくらの約束の場所へ
いち早くかけつけた彼
すぎ去った時は
川面に流すはなびらほどに
はかなくはない
手首にしみる手錠の冷たさを
忘れることのできない人のために
ひとしずくの友情のかげりの中で
ぼくが見たもの
彼が見たもの

それが今朝のあじさいの色だ
一足とびに時間をこえて
炎の闇に飛びこんだ日々
ぼくらの青春の喉仏が神々の硬い扉を
噛みくだくために
直立不動の姿勢からおともなく
大地に倒れこんでいった時
ぼくが受けとめたのは
まだ暖かみのあるひとつの手袋だけだった
彼は未明のやさしい心を
手袋の中にのこしたに違いない
香りこそたきこんではいなかったが
それは柔らかいけもののぬくみのように
冷たい空の中へゆっくり落ちつづけていった
そしてぼくは生きた

関連書籍

「花影石心」