第七詩集

不都合な旅

「詩集 不都合な旅」
山本まこと

四六判、並製、94ページ 
定価:本体2,000円+税
978-4-86385-012-5  C0092

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著者プロフィール

山本まこと(やまもと・まこと)
1945年佐世保市生まれ。大学中退。
所属詩誌「あるるかん」「水盤」
既刊詩集
「冬の音楽」(2001)
「始業」(2002)
「沈黙するには遅すぎて」(2005)
「鏡と眼差し」(2007)
「その日、と書いて」(2008)
「鳥の日」(2009)

もくじ

妹よ
海光
夏の正午
危うい壁
冬の日溜まり
日の王よ
不都合な旅
その木
presence
海浜手稿
鳥の教え

ピッ
時の蜜
オカノ
ほとりにて
その慈悲の
鯨肉を解凍するあいだ
テレビ欄
海辺のリリー
詠唱
西彼杵半島

不都合な旅

おぼつかない水の母
海の月たちと呼び交わし
有罪性の頭頂部のあたりは夕映えて
空虚がうごく
うごいていきます
するすると眩暈のようならせんを解いて

そこかしこ
いまはもういないひとの指紋が油のように熟れ
何をしても
何をされても不思議じゃない時間
透明な毒を飲んで破れているのが路上の喩なら
ここにいてはいけない
だから意味よりも深い不安を閉じて旅に出るのだ
たぶんみずからは終われない不都合な旅
見えない壁は舌で触って

死ぬ前に姿を消した猫のマーヤは
何を拒んで
一体どんな死にめぐり逢えたことだろう
復讐だとか報復だとか
吊るされたような人間の感情なんか知らないままに
日々の許しからさえ遠ざかり・・・

壊れるためにあったものは壊れるしかなく
最初からなかったもののあるはずもなく
未盗掘の王墓の沈黙は何を待っているのか
恐ろしいまでに何もしないで?

忘れられてなお消えぬフルートの嘆息を風に預けて
もうここにはいられないと
けっしてみずからは終われない乱暴な旅に出るのだ
古びた鏡の皮をまとった欲望の
その方舟をそっと押し出すように