第三詩集

見えない潮

詩集「見えない潮」
坪井勝男

A5判変形、並製、84ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-902108-60-6 C0092

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著者プロフィール

坪井勝男(つぼい・かつお)
1929年・神奈川県生まれ
敗戦直後の新宿、露店でリルケ詩集に出会う。文芸首都(廃刊)に投稿を始める。選者菊岡久利。仕事の為に中断し、還暦を過ぎてから詩作を再開。
 所属:「詩誌 沙漠」・福岡県詩人会
 著書
  1995年 詩集「午後の風景」私家版
  2000年 詩集「樹のことば」梓書院(第37回福岡県詩人賞受賞)

もくじ

雨 粒
水 脈
見えない潮(うしお)
通 知
微 笑
暖 簾
途中下車
揺らぎ
アラカシの樹
棲みついて
ドッグフード

ひまわり

握りしめて
風の行方
おそれ
追い越し禁止
めし食い放題
行者杉
道の神
流されながら
0番ホームにて
晩 秋
野ざらし

見えない 潮

たぷ
たぷと 海から跫音とが聞こえてくる
残された干潟にも漂着する重油ボール
甲羅が乾いた小蟹を
汐溜まりに戻そうとすると
蟹は激しく抗い
鋏をぼくに突き立てて 走り去った
指の痛みは箴言のようだ
トビハゼは横目でヒトを見据えている
泥土にうごめく無数のいのち
喰いつ
喰われつ
おびただしい生と死のあかしは
泡粒にかわり
みな呟きながら爆ぜていく
それは
かすかな気体の淀みだが
あたり いちめん和音となる
聞き入っていると
見えない潮に満たされる
この 遠いなつかしさは
どこから
寄せてくるのだろう