第4作詩集

トカゲの人

「詩集 トカゲの人」
田島安江

四六判変形、並製、112ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN4-902108-39-9 C0092

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著者プロフィール

田島安江(たじま・やすえ)
1945年大分県生まれ。
所属詩誌 「侃侃」「something」

既刊詩集
『金ピカの鍋で雲を煮る』(花神社・1985年)
『水の家』(書肆侃侃房・1992年)
『博多湾に霧の出る日は、』(書肆侃侃房・2002年)

掲載情報

読売新聞 2006/11/28(火)の朝刊「時評 詩」に掲載されました。

もくじ


秋の遅い午後
木と鳥と
黒門橋
終着駅
絵空事の月
トカゲの人
記憶の水琴窟
眠れない夜の片隅で

**
海のにおい
蛇の住む町へ
ハンミョウ
ユリカモメ
野いちごの棘
死を食べ続ける虫
するりと虫が

***
泣き女
博多にぎわい通り
洗濯日和
狐の嫁入り
割れた卵
あちら側の家
槐の白い花がはらはらと

あとがき

トカゲの人

何もかも知っているふりをして
トカゲの姿をしたあの人が
庭をよぎる
ちらりとこちらを見て
だからもう夢はどこにも行かない
若いときよりもずっと過激に
人を愛することだってあることを
きっと誰も知らない
かなしみは年をとるほど深いから
愛だって深くなるから
心だけを
さみしい粉砂糖のように甘くできれば

不眠の夜が歩道に寝そべって
わたしの方をじっと見ている
鳥が鳴かないのは
鳥がいなくなったわけではない
鳥は眠っているだけ
おいで
ここにはないものがない
人にはなくても鳥にはあるから
鳥は歩く
鳥は飛ばない

鳥は歩かない
鳥は飛ぶ

鳥はわたしを見捨てない

ずっとむかしに
本を読んで過ごした
星の零れ落ちる小さな公園
いまは夜の片隅にうずくまったまま
マンションに囲まれて
ひっそりと虚無を抱え込む
どこからか小さな悲鳴が聞こえる
――いま、何をしているのか

関連書籍

「博多湾に霧の出る日は、」