劉暁波の詩業を見渡す第二詩集

独り大海原に向かって
「詩集 独り大海原に向かって」
劉暁波/著 劉燕子・田島安江/訳・編

四六、並製、272ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-296-9 C0098

これは劉暁波の遺書である。

詩集『牢屋の鼠』に次ぐ詩人劉暁波の第二詩集で最後の詩集。
2017年7月13日、劉暁波に死が訪れるまで彼を呪縛し続けた「天安門事件犠牲者への鎮魂歌(レクイエム)」、『牢屋の鼠』以降の劉霞への愛の詩「獄中から霞へ」、自身を広い世界へと解放した「独り大海原に向かって」を収載。

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著者プロフィール

劉暁波 (リュウ・シャオボ/ Liu Xiao Bo)
1955年12月28日、吉林省長春に生まれる。文芸評論家、詩人、文学博士(北京師範大学大学院)。1986年、「新時期十年文学討論会」において「新時期文学は危機に瀕している」と歯に衣を着せぬ発言で論壇に注目される。
1989年3月から5月、米国にコロンビア大学客員研究員として滞在するが、天安門民主化運動に呼応し、自らも実践すべく予定をきりあげ急遽帰国。
1989年6月2日、仲間3人と「ハンスト宣言」を発表。4日未明、天安門広場で戒厳部隊との交渉や学生たちの無血撤退に貢献し、犠牲を最小限に止める。6月6日に反革命宣伝煽動罪で逮捕・拘禁(1991年1月まで)、公職を追われる。釈放後、文筆活動を再開。
1995年5月~ 1996年1月、民主化運動、反腐敗提言、天安門事件の真相究明や犠牲者たちの名誉回復を訴えたため北京郊外で事実上の拘禁。1996年9月から
1999年10月、社会秩序攪乱により労働教養(強制労働)に処せられる。劉霞と獄中結婚。
2008年12月8日、「〇八憲章」の中心的起草者、及びインターネットで発表した
言論のため逮捕・拘禁。2010 年2 月、国家政権転覆煽動罪により懲役11年、政治権利剝奪2年の判決確定。
2010年10月、獄中でノーベル平和賞受賞。
2017年7月13日、瀋陽の病院で多臓器不全のため死去。
中国語の著書多数。日本語版は『現代中国知識人批判』、『天安門事件から「〇八憲章」へ』、『「私には敵はいない」の思想』、『最後の審判を生き延びて』、『劉暁波と中国民主化のゆくえ』、詩集『牢屋の鼠』。その他劉暁波の評伝に『劉暁波伝』がある。

訳・編者プロフィール

劉燕子(リユウ・イェンズ/ Liu YanZi)
作家、現代中国文学者。北京に生まれ、湖南省長沙で育つ。大学で教鞭を執りつつ日中バイリンガルで著述・翻訳。日本語の編著訳書に『黄翔の詩と詩想』(思潮社)、『中国低層訪談録-インタビューどん底の世界-』(集広舎)、『殺劫―チベットの文化大革命』( 共訳、集広舎)、『天安門事件から「〇八憲章」へ』(共著、藤原書店)、『「私には敵はいない」の思想』(共著、藤原書店)、『チベットの秘密』(編著訳、集広舎)、『人間の条件1942』(集広舎)、『劉暁波伝』(集広舎)。論文には「社会暴力の動因と大虐殺の実相」(「思想」2016 年1月号―特集・過ぎ去
らぬ文化大革命・50 年後の省察―岩波書店)、「劉暁波・劉霞往復書簡―魂が何でできていようとも、彼と私のは同じ」「三田文學」2017 年秋季号など、中国語の著訳書に『這条河、流過誰的前生与后生?』、『没有墓碑的草原』など多数。

田島 安江(たじま・やすえ)
1945年大分県生まれ。福岡市在住。株式会社書肆侃侃房代表取締役。
既刊詩集『金ピカの鍋で雲を煮る』(1985)
    『水の家』(1992)
    『博多湾に霧の出る日は、』(2002)
    『トカゲの人』(2006)
    『遠いサバンナ』(2013)
共編訳 劉暁波詩集『牢屋の鼠』(2014)
    都鍾煥詩集『満ち潮の時間』(2017)
    劉暁波第二詩集『独り大海原に向かって』(2018)

もくじ

天安門事件犠牲者への鎮魂歌(レ クイエム)
 死の体験―「六・四」一周年追悼―
 十七歳へ― 二周年追悼―    
 窒息した広場― 三周年追悼―    
 一本の煙草が孤独に燃える― 四周年追悼―    
 岩石の粉砕から始める― 五周年追悼―    
 記憶― 六周年追悼―    
 ぼくはぼくの魂を解き放つ― 七周年追悼―    
 あの日― 八周年追悼―    
 またもや肉薄、襲撃だ― 九周年追悼―    
 時間の呪詛の中に立ちつくす― 十周年追悼―    
 蘇氷嫻女史に捧げる― 十一周年追悼―    
 一枚の板の記憶― 十二周年追悼―
 ぼくのからだのなかの「六・四」― 十二周年追悼―    
 「六・四」一つの墳墓― 十三周年追悼―    
 「六・四」夜明けの暗黒― 十五周年追悼―    
 亡霊を記憶に刻む― 十六周年追悼―
 暗夜の百合の花― 十七周年追悼―
 あの春の霊魂― 十八周年追悼―
 子ども・母・春―「天安門の母たち」HP設立のために― 十九周年追悼―

獄中から霞へ

独り大海原に向かって

詩人としての劉暁波 劉燕子

劉暁波の遺書 田島安江

死の体験―「六・四」一周年追悼―(抜粋)
 
 
記念碑が声を殺して哭いている
流血が染み込んだ大理石のマーブル模様
心が、思いが、願いが、青春が
戦車の錆びたキャタピラーに轢き倒され
東方の太古の物語が
突如、鮮血となって滴り落ちてきた

あんなにうねり逆巻いていた人々の流れが消えていく
ゆっくりと干あがる河のように
両岸の風景が石の塊に変わったとき
一人ひとりの数えきれない喉が恐怖で窒息し
砲煙に震えあがり散り散りになった
殺し屋の鉄かぶとだけがきらきら光る

関連書籍

「詩集 牢屋の鼠」
「詩集 毒薬」