第三詩集

星々の冷却

「詩集 星々の冷却」
井上瑞貴

四六判変形、上製、88ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-200-6 C0092

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著者プロフィール

井上瑞貴(いのうえ・みずき)
1955年、愛知県生まれ。

もくじ

星々の冷却
無関係に雲は流れる
階段を降りてくるやさしさ
そして愛のように虚しさに満たされ
そこが海だとしても
歴史の溝が掘られている
秋を告げる声を聞き分けよ
名もない草に名もない虫がとまっている
終りのない他者の風が吹いている
右手の愛を左手は知らない
踏切を羊と横切る
猫と同時に家に帰りつくこと
希望が石を棄てている
夜景
あなたを数える永遠がある
見知らぬ浜辺をいく九月
朝に夕暮れを書き加える筆を手にして
どこかから振り返る遠景に見ていた
億の水とともに橋をわたる
流星群
海岸に、影でしかない
幼年期
風を買いにでかける
そして沈黙の音に触れたかった
水に帰るこだま
                                 

星々の冷却
 
 
夜空について書かれたものが永遠なのは冷却されているからだ
星々に隠してきたものがあばかれることがあってもそれは冷えている
猫も家の前の石段を毎回数えなければ登ることができない
真冬には川の気配さえ凍る
あたたかくしてください

「雨は重力の平行線である」といった言葉に出会ったのは四ヶ月前だが
それから五ヶ月経った
戦闘を望む戦争がおわると戦闘を望まない戦争がはじまるそれは冷えている
口には砕かれた会話をつめこんで
なぜ氷のようにとけてしまわないのかと問うばかりだ
冷えているものは冷えているからいい
あたたかくしてください
悲しませてください

星々のかげに隠されたものは引き出しのなかにしまわれてある
引き出しに隠されたものはどこをさがしても見つからない
あたたかくしてください