韓国翻訳詩集

あなたという記号

「詩集 あなたという記号」
著:金 惠 英 訳:韓 成 禮

四六、並製、176ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-087-3 C0098

韓国で少女時代を過ごした、アナキスト金子文子の生き方を詩にした「文子金子」が、金子文子の夫である朴烈の記念館「朴烈義士記念館」(聞慶/ムンギョン)に大きく展示され話題となる。日本語訳は、韓成禮によるもの。

著者プロフィール

金惠英(Kim, Hye Young)
1966年、慶尚南道古城生まれ。
釜山大学校英語英文学科及び同大学院卒業、英文学博士
1997年、『現代詩』で文壇デビュー。
1999年、釜山大学校第六回<大学院学術賞>受賞。
2004年、詩集『鏡は千の耳を開く』出刊。
2005年、評論集『メドーサの鏡』出刊。
2010年、詩集『フロイトを読む午前』出刊。
2010年、第八回<愛知(エジ)文学賞>受賞。
季刊《詩と思想》編集委員。
ウェブ・マガジン《若い詩人たち》発行人
2012年から《POEMPOEM》編集委員として参加。
現在、釜山大学校英語英文学科で英米詩を教えている。

もくじ

序 詩

Ⅰ あなたという記号        
薔薇と殺人 
記号物語 
やわらかな時計の中で 
フロイトを読む午前 
パズル・ゲーム 
だるいチューリップ 
トルソ 
壁画のかかった家 
自画像 
バベル図書館 
丸いひまわりの時計の中へ 
砂漠の火花 
極楽鳥が膳立てする朝食
霧を作る男 
日差しを斬る剣客 
幸せな日々 
内密な関係 
変な作文 
不感症を治療する精神分析家 
コブラ 
萬年灯 
七月は迷路、八月は 
星座 
水族館707 号 
舞踏塚 
ブランコ、少女と広場 
キリン、階段、階級 
目敏いライオン 

Ⅱ 夢の中の古代史        
蜘蛛の巣にかかった父 
Jの研究室 
千年王国1、2、3 
孔子の妻 
伽倻王国への道 
赤い旗と黄色い花、そして青いカーペット 
失われたメソポタミア 
教皇が客観的な猿に問うた 
文子金子 
ホーチミン、赤道の革命戦士 
大学講師ハイエナ 
九十九の仮面1、2、3 
玄武、江西大墓の墓の内壁画 
地球の果てから来た星の王子さま 
ホルスの目 
三人の女神の家系図 
ランボー、その寂しいキス 
本の墓 
パラダイス 

解 説           
Jの研究室を覗く 李在福(文学評論家、漢陽大学教授)

                                 

記号物語

あなたという、想像の中の記号を独りで愛しました。
鱗の落ちた一匹の魚をガラス瓶の中に入れて送りました。
一万年が過ぎたあと無意識の中に残っているかもしれませんね。
あなたという記号が花を咲かせたことが、
あなたがバンパイアのように、私の生血を吸うことが
分かるようになったのは、十五年も過ぎた秋でした。
あなただけが生血を吸うと思ったのですが、
私はあなたの脚にくっついて、シラミのように、
あなたの皮膚に舌を突き付けたりしました。
あなたという記号は、中世の黒騎士のように、
南道*に沿って行きながら朝日の昇る夜明けに唇を合わせました。
あなたという記号を待ちながら、赤ワインを
食卓において、ぼんやりと眺めたりしました。
毎晩、古い押入れの扉を開け、降りて来て
布団の上に並んで横たわるあなたという記号は、
巨大なコウモリになって天井に上りました。
蛍光灯は熱いよ。気をつけてね。憎らしいけど
あなたという記号がいつまでもわたしのそばに
宿っていてほしいのです。独りで冷や飯を食べる
中世の冬の夕方が耐えられないはず。
あなたという記号を偲ぶ、もうひとつの記号。

 (訳者註)
 *南道 韓国の京畿道以南の忠清、慶尚道及び全羅道の三道を言う。

関連書籍

「小さく、低く、ゆっくりと」著:アン・ドヒョン 訳:ハン・ソンレ