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ルイス・キャロル (Lewis Carroll) ③

  • 2012-06-06 (Wed) 06:02
  • 総合

 この物語が誕生したのは、もちろん、ヒロインのアリスという闊達な少女が実在したからだ。本名アリス・リデル。キャロルことドジソンが勤務していたオックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジの学寮長(dean)の娘さんだった。1862年にドジソンはアリスや彼女の姉妹たちと大学近くを流れるテムズ川の支流でボートに乗って遊びに出かけ、アリスたちにせがまれてお話をしてあげた。この時のお話が今なお全世界で愛されている作品となったのだという。今年はそれから150年の記念すべき年になる。
 物語の筋をここで書いてもあまり意味がないかと思える。とにかく、地下の世界で繰り広げられるお話は支離滅裂だからだ。例えば、アリスが瓶の液体を飲むと体が小さくなり、ケーキを食べると大きくなるとか。「女王さまのおでましだ」という声が聞こえたので、アリスが待っていると、「体」は薄っぺらいトランプのカードであり、四隅から「手足」が出ている女王様や王様、彼らの臣下の行列がやって来る・・・。
 ドジソンは一生を独身で過ごし、アリスのような少女たちとの触れ合いをことのほか楽しんだ。写真の腕も一流で、ドジソンが撮影した可愛いアリスの写真も残されている。
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 オックスフォードでは、ドジソンとアリスのゆかりの深い場所を歩く1時間程度の散策のイベントも時折催されている。ガイドはオックスフォードを舞台にした文学作品に詳しいマーク・デイビスさん。ドジソンが47年間にわたって暮らしたクライストチャーチ・カレッジの建物や、彼がアリスたちと一緒に歩いた、当時のままに残っているクライストチャーチ・メドウズと呼ばれる湿原の小道などを案内してもらった。散策の後、カフェで少し疑問に思っていたことをデイビスさんに尋ねてみた。
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 「彼は1898年に65歳で没するまで一生を独身で過ごしていますね」
 「オックスフォード大では当時教師(lecturer)は独身であることが義務づけられていましたから、珍しいことではありません。彼は吃音症(注)があり、内気な性格もあって、大人と接するのが苦手で、子供たちと接するのを好んだのです。今よく問題になっている小児性愛者(pedophile)的な要素があったわけではないと思います。彼の日記や文書を読んでも問題とすべきような面は私の知る限りありません」
 「彼は大家族の長男として生まれました。自分の家族は持てませんでしたが、弟妹たちから頼りにされ、彼らの面倒を見てあげています。アリスの物語で有名とはなりましたが、それよりも専門である数学で名を成したかったという思いはあったかもれしれませんね」
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 「アリスの物語が人気を博したのは、挿絵の素晴らしさもあったと思います。当時の一流のイラストレーターの作品ですからね。今も多くの人があの挿絵にも魅せられて、物語に引き込まれているのではないでしょうか。私の観光散策ではお客の半分はあなたのような日本人です」
 (写真は上から、ドジソンとアリスのゆかりの場所を歩く観光散策。生憎の雨模様だった。参加費は6.50ポンド(約910円)。クライストチャーチ・メドウズと呼ばれる湿原。左で説明している男性がデイビス氏。川遊びの舞台となったテムズ川の支流)

 (注)ドジソンが吃音症ゆえに作品の中に登場させたと思われる動物がいる。ドードー(Dodo)と呼ばれる今では絶滅した鳥だ。彼は自分の名前を名乗る時、“Do, Do, Dodgson” という具合にどもっていたので、彼はこのDodo に「愛着」があったと言われる。オックスフォード大の自然史博物館には、この鳥の復元模型=写真=が展示されている。アフリカのインド洋に浮かぶモーリシャスに生息していた大型のハトのような鳥で、約100万年にモーリシャスに渡った後、島には天敵がおらず、飛ぶ能力を喪失したとか。17世紀初めにロンドンを含めたヨーロッパに一部のドードーが連れて来られたが、17世紀末までには地球上から絶滅したと考えられている。“dead as a dodo” と言えば、「完全に死滅した」「(人、物が)時代遅れの」という意味の熟語だ。
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