Home > 総合 > クリームティー

クリームティー

  • 2012-09-25 (Tue) 04:31
  • 総合

null
 英国滞在も残り少なくなった。あと執筆を予定している作家は3人。もっと多くの作家を取り上げるべきなのだろうが、私の知力、財力ではこのあたりが限界だ。
 先週末はシェイクスピアの故郷、ストラッドフォード・アポン・エイボン(Stratford upon Avon)を訪れた。やけに長ったらしい名前の地だ。シェイクスピアがなければただの平凡なイングランド中部の町に過ぎないようなところだったが、さすがにシェイクスピア。ここも多くの観光客で賑わっていた。今回の旅でずっと感じていることだが、どこに行っても、中国人観光客の多さに驚く。文字通り、物見遊山の風情である。
 クリームティー(cream tea)について少し触れたい。ストラッドフォード・アポン・エイボンでも評判の店があったので、そこでクリームティーを味わった。値段は4.95£(約700円)。これまでも何度か食していたが、これまでで一番美味いと思った。お腹が空いていたせいもあるかもしれない。
null
 クリームティーに関しては素朴な疑問がある。濃縮クリーム(clotted cream)とジャムをたっぷり塗って食べるスコーン(平らで丸いパンケーキ)が二個も付いてくるクリームティーを午後の3時から4時ごろ食すると、夕食の食欲が失せてしまうのではないかという疑問だ。アフタヌーンティー(afternoon tea)となると、これにサンドイッチまで付いてくる。先述の店では値段が9.95£に跳ね上がっていた。胃袋の小さい人ならこれでほぼ満たされるのではないか。
 ロンドン近郊に住むミドルクラスの主婦の方と話していたら、彼女は普段の生活でクリームティーやアフタヌーンティーの類を食することはない。特別の祝いごととかある時にホテルやレストランでそうしたティーを楽しむことはあるとのことだった。従って、普段の生活は朝食、ランチ(サンドイッチなど)、夕食ときちんと一日3食で、午後に適宜ティーかコーヒーを飲む程度。朝食にしても週末を除き、いわゆるボリュームたっぷりのイングリッシュブレックファーストを食することはまれで、シリアルやトーストなどのあっさりした食事で済ませているとか。それで合点が行った。
null
 ちなみに、食事の呼称で、私はディナー(dinner)と聞くと、どうしても夕食(supper)を想起してしまう。ところが、彼女によると、ミドルクラスより所得の少ないワーキングクラスの人々はランチのことをディナーと呼ぶとか。「お昼時にランチを意味して、“I take my dinner.” などと言う人がいたら、その人はワーキングクラス(出身)の人です」と語っていた。ミドルクラス以上ではランチのことをディナーと呼ぶことはまずないらしい。
 私は食い意地が張っているから、クリームティーぐらいでは満足しないが、それでも午後の「中途半端」な時間に胃袋を満たすと、勝手が狂ってしまい、夜中にスーパーでビールとつまみをいつもより余計に買い込み、翌朝、何だかなあという気分で目覚めることになる。「慣れない」ことはしない方がいいようだ。
 (写真は上から、ストラッドフォード・アポン・エイボンのカフェのクリームティー。その看板。サセックス州ライで以前に味わったクリームティー)

Comments:4

Taka Asai 2012-09-25 (Tue) 05:28

省一さん、長旅も終盤に入ったとかで、誠にお疲れさまです。今回取材された「ロンドン近郊に住むミドルクラスの主婦」や彼女の言う「ワーキングクラス」などの表現からイギリスの階級社会の一端がのぞけてくるのですが、国民の意識としてこのような呼称は定着しているのでしょうか。afternoon teaに関しては以前、日本人観光客の定番になっている香港のPeninsulaで愚妻とトライしましたが、一人約3000円と高かったですね。

元ロンドン在住者 2012-09-25 (Tue) 07:02

 勝手にお邪魔させていただきます。
 昼食をdinnerと称する場合、夕食はteaと呼ぶことがありますね。最初は夕方にお茶を飲むのかと思っていたのですが、実質的に夕食を意味しているようです。
 例えば英国の映画監督Mike Leighの「All or Nothing」には、労働者階級の親子の会話として、「What's for tea?」「Chicken and vegetable pies.」という台詞が出て来ます。これは明らかに普通の夕食をさしています。
 また、学校給食も英国ではschool dinnerと、lunchではなくdinnerですね。

 ロンドンの高級ホテルなどのAfternoon Teaには、シャンパンつきで50~100ポンドくらいするものもありますね。クリーム・ティはもう少しお手頃ですが、これもピンきりです。

たかす 2012-09-25 (Tue) 08:59

三題噺の伝でいけばデフォーを語り、ダンブロディの饑饉船に触れたんですからジョナサン・スイフトの「A Modest Proposal」に少し触れて下さい。この恐れながらの提案はいまもユーロ危機対策としていろいろその名を使っていくつか提案がなされています。提案者たちはスイフトと同じように実現の可能性は少ないと承知してのことのようです。三題噺を完成させて下さい。

nasu 2012-09-25 (Tue) 19:13

Asaiさん、 はい、残念ながらそういう「クラス」意識は今も陰に陽に残っています。最近でも与党保守党の院内幹事長が首相官邸を警護している二人の警察官に対し、暴言をはいて物議をかもしています。彼はその際 "You're f***ing plebs." という差別意識丸出しの暴言を吐いたと報じられています。本人は否定していますが。
元ロンドン在住者様 ご指摘ありがとうございます。その通りですね。tea が「(早めの)夕食」を意味することもあることは。
せんせい スイフトの作品も取り上げたかったのですが、今回はちょっと・・・。

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。

Home > 総合 > クリームティー

Search
Feeds

Page Top