O本家の生物

久しぶりに実家の近くにあるO本家を訪れた。O本家には犬をはじめ、数々の生物が生息している。
O本家とは姉の家である。もともと生き物をこよなく愛する姉ではあった。惜しむらくはネーミングセンスはゼロだったが。
姉が結婚して生まれて始めて別に暮らし始めた頃、彼女はアマリリスを飼った。誤変換ではない。あれは飼っているといって良い可愛がり様だったと思う。あのときに予想するべきだった。
後に一軒家を持ち、兄妹2人の子持ちになって彼女はグレードアップした。現在、犬が2匹、水槽が5個、虫かごが6個。子供の兄のほうが無類の生き物好きで、はじめは皆、子供につき合っているのだ思い込んでいた。しかし、ここに至ってこれは本人も好きなのに違いないと確信した。
先日そんな姉が変なものを買ってきた。「ウーパールーパー」というやつだ。いっとき流行った、あれだ。ちょっと珍しいタイプではあるが、れっきとした両生類。
ある時、姉一家がどうしても数日留守にすることになった。世話をしてほしいと言って実家に犬2匹と虫かご数個、水槽1つが運び込まれた。普段は姉と甥がしっかりと面倒をみているので、そんなときくらいはもちろん母も快く引き受ける。

犬はもともと実家にも3匹いるので、ある意味で誤差のようなものだ。虫はゼリーを与えておけばいいらしい。問題は水槽のウーパールーパーの「うーちゃん(命名:姉)」である。
O本家でのうーちゃんの立場はどうやらかなり高いらしい。姉の手によってうーちゃんはカウンターキッチンのカウンターの上に設置された。
「餌は冷蔵庫のあかむしをね…」ちょっと待った。冷蔵庫ということは生か!?
母とぽちは一気に引いた。その時点で世話人はたまたま帰省中だった、ぽち夫に決定した。母とぽちは虫が苦手である。父も無言であった。ぽち夫はいつもの笑顔で、こともなげに引き受けた。

この日から、キッチンのカウンターにウーパールーパー。ジャガイモの皮をむいているときに目の前にウーパールーパー。出来上がったものをカウンターに置く。お味噌汁の横にウーパールーパー。ご飯の横にウーパールーパー。焼き魚の横に…。奴は両生類だよ!?
できるだけ目を合わせないようにしようと心に決めた。
平穏に2日間が過ぎた。が、ぽち夫は福岡に帰らなければならない。ぽち夫が帰って、姉一家が戻ってくるまでに間が1日あることに、前日まで誰も気付かなかった。誰が餌をやるのだ。もちろん、母とぽちの視線は父に注がれた。父が虫をあまり得意でないのは知っていた。しかし、ここで視線を外したら負けである。
仕事一筋でやってきた父に、これほど真剣に家のことを強く要求したことがあったろうか。有無を言わせぬ勢いであった。しかし、家のことといってもゴミ出しでも皿洗いでも掃除でもない、「うーちゃんの餌やり」である。
そして次の日。年齢にしては長身で180cm近くある父が、無言でキッチンの水槽に向かい、割り箸でうーちゃんにちまちまと餌をやっていた。本当にありがとう、父。
姉が帰ってきてぽち夫と父に大変感謝したのは言うまでもない。その姉が笑顔で言った。慣れてきたら可愛いでしょ?…いや、ちょびっとは慣れてきたけど可愛くはない。
うーちゃんにはまだ慣れそうもないけれど、姉よ、姉のその感覚にぽちは慣れたよ。
2007-12-07 13:04 by pochi
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