Home > Archives > December 2008

December 2008

『探偵小説のクリティカル・ターン』、笠井さん側再び

 「探偵小説のクリティカル・ターン」(南雲堂)にも笠井潔さんの反論が掲載されています。
 果たして、有栖川有栖さんの「評論は作品の先に立たない、立てない」という指摘が、小説の評論に対する優位性をいったものなのかどうか。私には、「ミネルバの梟は黄昏に飛びたつ」という警句と同様な意味にさえ解釈できます。
 要するに有栖川さんや私の違和感は、なぜ『容疑者Xの献身』が現在やり玉に挙げられなければならないのか、その必然性が飲み込めないという点にあります。
 引きつづき、検証はしてみます。探偵小説のクリティカル・ターン

 

『探偵小説は「セカイ」と遭遇した』(青雲堂)、笠井潔さんの反論

 「容疑者X」論争、笠井潔さんサイドからの反論です。
 まず笠井さんの論点は、『容疑者Xの献身』は本格推理としてはレベルが低いということ。そして、それを見抜けず、この作品を高く評価してしまった評論家・作家達には、現在の本格推理小説が捕らえるべき本質的な問題が見えていないということです。また有栖川有栖さんに対しては、小説を評論より優位におくことによって、前世紀的推理小説観に安住しようとしているという指摘。誠に厳しい限りです。
 「なるほど」と思える部分と、「そうかな」と感じる部分がありました。とりあえずは、笠井氏が述べているように西尾維新さんの『クビシメロマンチスト』の方が『容疑者Xの献身』より可能性のある作品なのかどうかの検証から始めてみたいと思います。探偵小説は「セカイ」と遭遇した

『マレー鉄道の謎』、有栖川有栖さんを読む

 有栖川有栖さんの作品も読んでみました。
 このような作品を読むと、本格推理小説にも、まだまだ傑作が生まれる可能性があるように感じられます。
 舞台はマレーシア。蛍を見ながら有栖川と火村英生が語り合う場面が印象的です。途中、火村が真相に気付く場面がありました。この時、彼には、どれだけの情報が与えられていたのか。そして、彼は何に基づいて真相を究明することができたのか。じっくりと検討してみたいと思います。マレー鉄道の謎 (講談社文庫)

『邪魅の雫』、京極夏彦さんを読む

 次回作「鵺の碑」が、なかなか出る気配がないので、「邪魅の雫」を読み返してみました。
 いうまでもなく、京極さんのは、また長~いです。
 そして複雑。特に、この作品は、「事件」のというより「事実」の構成が複雑で、それを正確にたどるだけでもたいへんです。
 はたして、これは推理小説なのでしょうか。笠井潔さんは、戦後本格推理小説「第三の波」の頂点に、京極作品を位置付けていましたが・・・。なぜ中禅寺秋彦だけが、事件を解明することができたのか。それは、彼が陰陽師だからということになってしまいそうです。今回の出番は少ないのですが、これが名探偵・榎木津礼二郎ともなると、論理もヘチマもないでしょう。他の探偵と同じように、彼らの論理的思考の道筋を解明することは可能なのでしょうか。一度、やってみたいのです。
 邪魅の雫 (講談社ノベルス)

 

『熾天使の夏』、笠井潔さんの原点

 何でも、フランスに行く以前の、全共闘時代の矢吹駆の過去を描いているシリーズ・ゼロと銘打たれている作品です。
 読了して複雑な気持ちになりました。
 このような過去をもつ人間が犯罪者の罪をあばく探偵の役割を担いうるのか。矢吹駆が現象学を用いるようになった理由も、まだ掴みかねています。
 そもそも名探偵とは、描ききれない過去をもった人物として登場し、その不思議さに読者は魅了されるものではないでしょうか。過去は謎めいたまま置いておいていただたほうがよかったのでは・・・。
 「熾天使」の意味も、まだ、よくわかりません。でも、何とか掴みきりたい作品です。
 熾天使の夏 (創元推理文庫)

 
 

『哲学者の密室』、またまた笠井潔さんを読む

 次は「哲学者の密室」読みました。
 これまた、超~大作。
 マルティン・ハイデッガーとエマニュエル・レビナスの哲学の勉強になります。また、20世紀推理小説と実存主義哲学が同じ土壌から生まれたという、とんでもなくも面白い理論も登場していました。
 「死の可能性」にのみ本当のリアリティがあると矢吹駆は言っていました。駆を救うべくトンチンカンンな推理をするナディア・モガール。彼女は「愛の可能性」を信じています。この作品以後、「オイディプス症候群」「青銅の悲劇」と、彼女の推理力は向上していっているようです。このシリーズは駆の教えを理解して成長していくモガールの物語でもあるのです。
 哲学者の密室 (創元推理文庫)

More...

Home > Archives > December 2008

Search
Feeds

Page Top