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「心の豊かさ」

  • 2010-09-17 (Fri) 05:11
  • 総合

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 タンザニアを代表するダルエスサラーム大学は想像通り、落ち着いた感じの広大なキャンパスにあった。案内してくれる人がいなければどこを歩いていいものか迷ったことだろう。かねてから政治学関係の先生に会って話を聞いてみたいと願っていた。しかし、大学は今、11月の新学年を控え、休みに入っているとか。無理かな。
 そうしたら、幸運にも政治学の学部長が学部長室にいた。来客が絶えず多忙なことは見てとれたが、会議の予定時間を「無視」して愛想よく招き入れてくれた。
 ベンソン・バナ博士。私が冒頭にタンザニアがケニアと比べ、経済的発展の度合いが低いように感じると印象を述べると、博士は「経済的指標ではそうでしょう。でも、社会的指標では私たちの方が豊かだと思いますよ」と穏やかに語り始めた。次第にボルテージが上がる。「我々タンザニア人は独立以来、大切にしてきたものが三つあります。平和(peace)と安全(security.)、それに国としてのまとまり(unity)です。我々は周辺国で何が起きたかを知っています。平和が損なわれるとどうなるのかを知っています。ここでは国内どこに行っても、出身部族がどうのこうのといったことは全然問題になりません。あるのは共通の言語、スワヒリ語を話すタンザニア人であるということです」
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 「我々の国は日本とは異なります。政治指導者に説明責任を求めるには市民としての成熟が必要です。我々はまだそのレベルに達していません。それに確かに、ニエレレ政権が独立後に推進した社会主義路線は失敗しましたが、それは当時は国民に独立の果実を味合わせるという必要があったことなどやむを得なかった側面もあります」
 博士はタンザニアがアフリカ解放の歴史の中で果たしてきた役割も指摘した。「ニエレレは1961年に独立を果たした時、アフリカの同胞や他の世界の人々が自由を手にしない限り、タンザニア一国が自由を獲得しても意味がないと訴えました」。確かに、タンザニアはアパルトヘイト(人種隔離政策)時代の南アフリカを始め、多くの国の開放闘争を先頭に立って支援してきた国でもある。「経済的にはタンザニアはまだ貧しい国でしょう。でも、心の中は我々ほど豊かな国はないと思いますよ」。バナ博士は嬉しそうに締めくくった。
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 この項の書き出しで述べた「案内人」は、ダルエスサラームの日本大使館に長く勤め、間もなく帰国される運びの木村映子さん。関西出身で早稲田大を卒業後、ダルエスサラーム大学大学院でスワヒリ語を学んだ木村さんはダルエス在留30年近い経験があり、バナ博士とも旧知の間柄。博士のほかにも、複数の英字新聞の編集幹部やインド系財界人とかいった人々と語る貴重な機会を設けていただいた。どこでもアポなしでの訪問で、「久しぶりね。ちょっと日本からの来客と話してあげて」という感じだった。どこの国であれ、こういう「財産」を持つ人はそうはいないだろう。
 (写真は上から、学校帰りの小学生。私の質問に片言の英語で一生懸命答えてくれた。大学の学食で食べたランチ。これで1000シリング=約65円=。汁がかけられたご飯の味が絶妙だった。カメラを向けると、急ぎメガネをかけようとしたバナ博士)

Comments:1

めるすき 2010-09-27 (Mon) 16:31

久し振りにおじゃまします。
多用でパソコンから離れていましたが、すごいすごい!!
さるかれていますね。ポレポレと熟・読・玩・味しますね~
”心の豊かさ”
忘れかけていたこのタイトルにドキッとしました。反省!

今宵、NHK hiで
「”文化”を受け継ぐチンパンジー、ウガンダの森」が
放映されますので楽しみにしていますが
マウンテンゴリラ、チンパンジー
私もなぜか心引かれるのであります(笑)。

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